kanki
今一番読みにくいバンド(この言い回しがえらく気に入ってます)mol-74(モルカルマイナスナナジュウヨン)の新譜、knakiが世に産み落とされてからしばらく経った。
kanki/mol-74
今作でも寂寥感のある曲調は変わらず、もの悲しい抒情的なメロディとのびのびとしたギターが鳴る。少年のようなボーカル武市の声と裏腹に大人びて抑制の効いた全体の作りもそのままだ。
僕としてはいちはやくメジャーにいってもっともっと多くの人に聴かれるべきアーティストの筆頭である。より大きな環境、サポート体制で曲作りをして欲しいと願うのは僕だけの我儘ではないだろう。
今作では全体を通して日の光、特に夕焼けの橙色がよく喚起kankiされた。もちろんジャケットのペールオレンジの影響もある。暑くはなく淡い光だ。
リリース時期としても立秋だし、彼らの得意とする冬のイメージ寒気kankiからは遠からずも近からずだと思う。
エイプリルという曲もあるし、春という単語がいくつか出てくる。twitterで公開された彼らのひとこと紹介でも冬からの脱却はテーマのひとつだったように思う。
%という曲では大学の講堂で演奏する彼らが見られる。
モルカル史上最多人数のエキストラがハンドクラップする。そのスピードはよくわからないけれど面白い。曲調としても映像としても彼らの中でいちばん明るい。
新代田で観たライブでもこの曲は異彩を放っていた。
いつもペシミズムな彼らが精一杯明るく振る舞おうとした曲だと思うと凄く可愛らしい。
ジャケットの淡いは多種多様な肌の色にも見えてくる。
ゆらぎという曲で武市は歌う。
泣いたり
笑ってみたり
怒ってみたり
跳んだり
落ち込んだり
忙しいね
僕らは
細かく見れば一瞬一瞬で人の顔は違う。髪型も違う。そして肌の色も違う。
内面だっていつも同じ感情ではない。
そのゆらぎの中に刹那でも歓喜kankiがあればとmol-74は願っているだろう。
そして
パッとしないこの世界を変えよう
紙とペンでは描けないような
素晴らしい世界が待っているはず
と僕らの手をひいてくれる。